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風邪ウイルスへのヨウ素の働きについて

ヨウ素の風邪予防のあゆみ

1913年頃から「ヨウ素治療法」を手掛けられていた「私立大日本牧野沃度研究所」所長の牧野千代蔵が「流行性感冒学」を1920年(大正9年)執筆されています。1915年、甲状腺ホルモンにヨウ素元素が含まれていることの発見と同じ頃です。ヨウ素治療法を始められたと聞いております。その著書には、スペイン風邪流行時にヨウ化カルシウム水溶液の皮下注射で重篤な患者の命が救われた事実が述べられています。

ヨウ素学会のホームページ「日本のヨウ素の歴史」にも、簡単にヨウ素の流行性感冒、肺炎等への使用法と効果が紹介されています。

小生が幼少の1950年頃は、風邪に由来する喉の痛みがある場合は、耳鼻咽喉科でルゴール液(ヨウ素・ヨウ化カリウムをグリセリンに溶かして調製した赤褐色の液)で扁桃腺部を塗布いただきました。最近は、風邪で喉に異変を感じれば「イソジンうがい薬」でうがいをすることで風邪をこじらせない予防に努めてきました。

なお、1995年頃からヨウ素とヨウ化カリウムの有機溶液を電解質に用いる色素増感太陽電池の研究を行ってきました。研究者の多くが風邪を患ったことが皆無であったと思いだします。昇華したヨウ素分子が体内に取り込まれた結果、風邪の予防につながったのではと考えています。

小林製薬ホームページ:殺菌消毒成分の“ヨウ素”にのどから感染するウイルスを幅広く殺菌できる効果を確認との報告:日本防菌防黴学会誌,Vol.46,No.4,pp.143−148(2018)https://www.kobayashi.co.jp/corporate/news/2018/180703_01/index.html

なお,ヨウ素が水に溶けると,ヨウ化水素,次亜ヨウ素酸(HOI)になることが,量子化学分子モデリングによって検証されました(ヨウ素学会研究動向に掲載予定)。

流行性感冒学

私立大日本牧野ヨウ素研究所所長 牧野千代蔵 著

自序
 一昨年(大正7年)の秋より昨年晩春に至る迄の流行性感冒は、いわゆる世界感冒の名に背かず、誠に人類の棲息するところ世界各地いずれを問わず猛威を振るい我が日本のみにても罹病者総数3000万人に及び内死亡者総数25万人にも達した。まさにこれは大惨事となった。しかしこの恐るべき流行性感冒の細菌学的研究諸説汪々にしてその予防法と治療法に何ら的確なる方法はなかった。私は、一昨秋流行の初期より些か自任するところあり多額の資金を投じ日夜寝食を忘れてこの病の研究に従事してきた。以来この研究業績発表は東京に、大阪に、九州に、その他いたるところに出張講演を行った。本書に挙げたものはすべて私の研究業績である。尚、本書の巻末に付録として肺結核症の化学的療法を述べた。この流行性感冒に罹り,なかなか治らない人は、ほとんど悉く肺結核症(現在で言う肺炎)に転症している。世に肺結核病の療法は、多いといえども未だ的確な療法はないのは誠に遺憾である。そこで私のいわゆる牧野式化学的療法は生理的療法と伴ってその効果は極めて確実で,その方法は簡単でしかも直ちに病原菌を殺菌しその殺菌力は偉大でヨウ素独特の作用により新陳代謝機能を亢進し毒素を中和希釈し、消炎吸収、組織細胞の新生を促進し、健康程度を向上させる等において他に比類を見ないところである。私は平生雑務紛糾の間に病理、細菌の研究、ヨウ素剤製薬に関する研究の側ら,患者の診療に従事し,また当研究所に来られる医師の講習等極めて多忙の中執筆するのは容易ではない。しかし,昨年来より杞憂し警告してきたが不幸にもこの冬より流行性感冒は大流行し新年になり日一日と猛威を振るい東京市内にても最近この感冒により死亡する者一日500人にも及ぶ惨状に鑑み,この悪性感冒が昨春のように再び世界を席巻するようになるのは瞭然で座視するに忍びなく,忙中閑を楽しみ奮励努力し本書を完成した。  本書中に流行性感冒の細菌学的研究、予防法、化学的頓挫療法(思いがけなく治癒したの意味)を述べた。皆これ私の研究と実験に基づくものである。もしこの著書が幸いに我が医界のため裨益(少しでも役に立つの意味)するところがあれば,私の本懐とするところである。いささかの微意を述べて序に代える。

大正9年2月(1920年2月)牧野千代蔵